そそそ過去ログ

インタネ社の配信でピアプロの絵を使おうとした人がいた話

2014年8月14日 14:38 

※この記事は2014年8月14日に「sososo actuvity」に掲載したものです。規約などの変更により現在とは状況が異なる場合があることをご了承ください。

 
先日、自分の身近にいる俗にいう“絵師”の人に「ピアプロ」にある「GUMI」の絵を使わせてくれないかととある“ボカロP”(死語?)から連絡が来たそうです。配信先は、VOCALOTRACKSという、GUMIやがくぽの発売元であるインターネット社の公式配信レーベルだそうで。

 
http://vocalotracks.ssw.co.jp/

 
その“ボカロP”は「ちゃんと公式の配信です」「有償でも構いません」とメールのやりとりで仰っていたそうで、まあしっかりしてる人なんかなという印象。

 
と思ったら、大間違いだ!!

 
権利関係について何もわかってない雰囲気だったので、その“絵師”のシチュエーションを例に、どこに問題があるかを考えていきましょうか。

 
■ピアプロにアップした絵はクリプトン社の許可なく有償利用できない
まずGUMIの場合なので混乱しますが、ピアプロより要約。

・GUMIは「投稿可能な他社キャラクター」としてピアプロへの投稿が認められている
・他社キャラクターのイラストでも、ピアプロ利用規約の範囲内でのみ利用可能。規約外の利用はNG
・権利者(今回の場合インターネット社)によって独自にキャラクターの使用に関するガイドラインが定められている場合は、そちらを優先
http://piapro.jp/license/other_character_guideline

んでもって、ピアプロの規約はどうなっているかという部分を要約。

・ピアプロに投稿したキャラクターイラスト(ミクでもGUMIでも)の商用利用許諾は、投稿者は勝手に出せない
http://piapro.jp/help/#q_copyright13

↑これ、理解してない“ボカロP”が多そう。

ピアプロに投稿した時点で、絵の作者だけでGOは出せず、仮にGUMIの場合だと、

 ピアプロ運営(クリプトン社)のGO
 二次創作絵師のGO
 GUMI権利者(インターネット社)のGO

この3つが必要になるので、絵師だけでは判断できないわけです。仮にインターネット社がOKを出していても「ピアプロにアップされた絵」なので、クリプトン社から許可を得る必要があるはず。

 

【22時頃追記】
Twitterで指摘されたので補足しますネ。

細かく規約を見ていくと、会員コンテンツ(=この場合ピアプロに投稿した絵)は、クリプトン社は必ずしも窓口にならないとのこと。つまりインタネ社のGOだけで、商用利用できる可能性があることになります。ピアプロに投稿していない場合はそれで問題ないと思います。

ただ、ピアプロの利用規約を細かく読んでも、ピアプロに投稿した他社キャラの絵(=会員コンテンツ)を更に他社が商用利用を打診してきた場合についての明記がされておらず、カッチリとした規約が存在しない状況のようです。

どちらにしろ、こういう状況が発生した場合は「許諾を取る」と書くと大げさかもしれませんが、クリプトン社に何か問題がないか問い合わせてみる必要はありそうです。

「初音ミク」のようなクリプトン社のキャラの場合と同様に
<(商用利用の)問い合わせがあった時には無用なトラブルに巻き込まれないためにも、一度弊社までお問合せください。>
これを徹底した方がより絵師の安全が保証されることは間違いないと思います。

また、以下も教えてもらったことですが「小説」については他社キャラの場合でもクリプトン社が窓口になっており、規約が整備しきれていない現状があるそうです。話が若干それますがご参考までに。

 
【ピアプロの規約より引用】(難しいので飛ばしてもおk)
第11条(所有権と知的財産権)

9. 会員コンテンツが投稿小説の場合、会員は、当該投稿小説の映画化、アニメ化、ドラマ化、ビデオグラム(VHS、DVD、ブルーレイその他現在実用化され、又は将来開発される一切の形式、構造、素材の記録媒体を含みます。以下同じ。)化、フィギュア等の商品化、出版化その他の二次利用について、当社が独占的な窓口権を有することに予め同意するものとします。当該二次利用の原作使用料その他の条件については、別途会員と当社との間で協議の上決定するものとします。

10. 会員コンテンツが投稿小説の場合、会員は、第三者から当該投稿小説の映画化、アニメ化、ドラマ化、ビデオグラム化、フィギュア等の商品化、出版化その他の二次利用の申込みを受けた場合には、直ちに当社に通知しなければならないものとします。

 
で、GUMIの方のキャラクター利用ガイドラインではこんな感じ。

 
・商用利用の場合、別途使用許諾が必要
http://www.ssw.co.jp/products/vocal/character_guideline/

 
ただし、今回の場合、インターネット社の有償配信(商用利用)における、インターネット社のキャラクター・GUMIの話なので、この部分だけピックアップしてみると問題はないかと思います。“ボカロP”もそういう認識だったのかなぁと思います。

 
ただ、結論としては、ピアプロに投稿されたイラストの商用利用は原則NGなワケです。小規模の同人頒布など(非営利かつ有償ってヤツです)はあまり普及はしてませんが「ピアプロリンク」を利用することである程度、堂々とやってもOKということになっていますが、今回の場合は、企業からの有償配信の話なのでそれとは話が別。「ピアプロリンク」の説明は長くなるので省略!(しかも「ピアプロリンク」が適用できるのはクリプトン社のボカロだけだったはず)

今回の場合、インターネット社の配信で、インターネット社のキャラであるGUMIの二次創作イラストを使用するというややこしいことになっていますが、上記の原則はおそらく守られるはず。なので、さっきも書いたけど、クリプトン社からも「ピアプロの絵を商用で使いますよー」と声をかけ「いいよー」という返事が必要になってくると思われます。

 
■ピアプロにイラストを投稿するということ
ピアプロでは、ほぼすべてのボーカロイドキャラクター、あるいはそれに付随する派生キャラクターを権利者から個別の許諾を得ることなく、二次創作して自由に公開することができます。それがなぜ可能になっているかというと、ピアプロを運営しているクリプトン社が窓口になって、一旦クリプトン社に、投稿者のイラストの権利を預けているからなんです。

しかし、クリプトン社はイラストの権利を「奪う」わけではありません。基本的に、今まで通り自由に使用することができます。ただし、イラストになんらかの危機が迫った場合に、預かっている権利を上手く使って「バリア」を発動する仕組みになっています。

例えば、自分の知らないところで、勝手にイラスト集が販売されたり。見ませんか?ゲーセンのクレーン系のゲームですごく怪しい、印刷とかボケちゃってる「初音ミク」のキーホルダープライズとか。アレ、個人のサイトに上げたイラストとかでやられたら泣き寝入るしかないっすよね。ピアプロにイラストをアップすることで、そういう悪者から自分のイラストの安全を守ってもらえるんです。

ピアプロに上げられたイラストは、他社のキャライラストも含めて、商用利用は基本NGで個別の許諾が必要となっているのは、つまりそういうことなワケですね。

 
■今回のような場合、どうすれば解決になるか
解決方法はいくつかあると思います。

 
【1. ピアプロからイラストを取り下げる】
個人で、当該イラストを商用利用許諾するための唯一の方法です。つまりピアプロからの「いいよー」をもらう必要をなくすってことですな。

ただ、今回の“絵師”のイラストは、すでにほかの人が動画などで使用してくれているイラストなので、取り下げることにデメリットもあります。先んじて動画で使っていた人からすれば、いくら自由とは言え、自分の動画の絵が全然関係ない人のジャケ絵になることについて、複雑な感情を覚えてしまう部分も少なからず出てくるでしょう。

また、例え“絵師”本人が許諾しても、今後一切のその絵を二次利用できなくなる可能性があります。
(ここらへん次の権利者が誰になるのかなど要確認)

 
【2. クリプトン社から許諾を得る】
ただし、クリプトン社は基本的に法人格相手にしか商用利用許諾は出しません。つまり、“絵師”や“ボカロP”の個別の相談ではそういう特例は出ないということです。

ではどうすれば良いのかというと、ピアプロのイラストを商用利用したい会社、この場合インターネット社に話をつけてもらうことになります。1人の配信のために、1枚のイラストのために、会社がそこまで動いてくれるかは疑問ですが、可能性としてはなくはないです。

 
【3. “絵師”が同テーマ、類似性のあるイラストを新たに描く】
これが一番現実的であるかなと思います。ただし、締切等が迫っている場合に無理はできませんが。

 
■問題はそれだけじゃなかった
その“ボカロP”。どうも複数の絵師に一斉に同じような内容の連絡を出しているみたいなんですね。ピアプロはもちろんpixivなどの絵師にも。それって、すごく失礼じゃないですか?手っ取り早くOK出してくれれば誰でも良い、みたいな。

ボーカロイドの黎明期からつきまとっている問題だと思いますが、曲を作る側は、もっとイラストを描いてもらう人、貸してもらう人に敬意を払うべきです。

心を込めて作った曲に相応しいイラストを、作る、あるいは探す際に、誠意を持って、イラストの作者にお願いすることはとても大事。気持ちが強いほど、きっとイラストの描き手も影響を受けてすごいイラストをぶつけ返してきてくれます。このままじゃイラストに負けてしまうと、自分の曲を手直しするほどに。。。

少なくとも自分はそうでした。

ウミネコを「にゃっぽん」(ボカロSNS)から探し出すのにどれだけ苦労をしたかは、当時の「にゃっぽん」の「まいぽん」(フレンド)なら覚えているかもしれませんなw

曲に合った絵を描いてくれそうな人をゼロから探すのって、そう簡単じゃないんです。マジで。

 

 
零花さんと切身魚さんなんか、お互いキャラ絵と背景で刺激しあって、それがこちらにも伝わってきて、このままじゃ曲がショボショボに聴こえる!ヤバい!!って初期段階からけっこう直しまくりましたもん。

 

 
動画のイラストだろうがジャケット絵だろうが関係なく曲の作者は、絵の作者への敬意を絶対に忘れちゃダメです。

複雑な権利関係を理解することも大事だけど、同じぐらいに、“絵師”への敬意を忘れないことも大事だと、自分は思いますよ。

 
(TEXT by 津久井箇人 a.k.a. そそそ